AUDIOLOGY JAPAN
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慢性中耳炎症例における聴力検査成績と年齢の関係
大竹 祐輔青柳 優布施 健生阿部 靖弘野田 大介
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2001 年 44 巻 6 号 p. 571-577

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抄録

慢性中耳炎症例の聴力と年齢の関係について検討する目的で, 当科及び関連病院にて行われた鼓室形成術症例1,182例を対象に, 術前の聴力検査と年齢を回帰分析し, 正常者の聴力データと比較し検討した。 (1) 鼓室形成術症例全体, (2) 疾患ごと, (3) 術式ごとに聴力検査成績と年齢の間で散布図を描き, 二次多項式による回帰曲線を求め, 正常聴力データの回帰曲線と比較した。 その結果, 罹患期間が長くなるほど低中音域において骨導レベルの悪化を認めた。 高音域では骨導値の低下は若年から認められ, ほぼ加齢とともに平行に推移した。 低中音域の骨導レベルの低下は, 罹患期間が長くなるに従い内耳障害が進むことを示す所見と考えた。 高音域は正常者での加齢変化により骨導レベルが低下し慢性中耳炎症例との差が明確でなくなるためと考えた。 罹患期間の長い高齢者ほど, また病変が内耳に近づくほど骨導レベルが低下する傾向にあり, できるだけ早期に鼓室形成術は施行されるべきと考えた。

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