2002 年 45 巻 6 号 p. 685-691
耳鳴の診療においては, その原因や性状の客観的な評価に加えて, 耳鳴による心理的苦痛度・生活障害度を把握することが重要である。 今回我々は耳鳴患者の心理的苦痛度・生活障害度を評価するために, THI (Tinnitus Handicap Inventory) の臨床的有用性を検討した。 耳鳴を主訴に受診した182例 (男性88例・女性94例) を対象とした。 THI値と聴力検査, 耳鳴検査所見などとの関係につき検討した。 次に治療希望群と経過観察群の2群に分け, 検査所見などにつき比較検討した。 また34例で治療前後の効果につき検討した。 THI値は0-100まで幅広く分布し, 耳鳴の心理的苦痛度・生活障害度を定量的に評価できると思われた。 THI値は耳鳴の自覚的大きさや気になり方, 睡眠障害と相関が認められたが, 耳鳴ラウドネスや遮蔽レベルとは相関はなかった。 THI値は診療方針の目安になり, また治療効果の定量的な評価に有用であると考えられた。