AUDIOLOGY JAPAN
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人工内耳装用による語音明瞭度改善例の異聴傾向
福田 章一郎問田 直美福島 邦博片岡 祐子西崎 和則
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2006 年 49 巻 6 号 p. 798-802

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抄録

人工内耳埋め込み後, 語音明瞭度の改善が顕著であった先天性感音難聴児9例の異聴傾向を検討した。人工内耳装用後, 適切なマッピングによる聴覚学習と療育を受けた結果, 57語表による語音検査で9症例の平均は85.1%となり非常に高い明瞭度が得られた。人工内耳装用児の異聴傾向は有声破裂音を除き難聴者とほぼ同じ傾向を示した。無声子音の明瞭度は有声子音に比し高かった。特に, 摩擦音の明瞭度が高かったがこれは人工内耳の場合は補聴器と比較し, 高い周波数まで聴取可能であるため明瞭度の向上が得られたことによると考えられる。人工内耳の語音聴取の改善には周波数分解能と同時に時間分解能が関与していることが示唆され, 個々の異聴傾向はそれぞれの複雑な組み合わせによるものと考えられる。しかしながら, 摩擦音, 破擦音では構音点が後方であるほど明瞭度が低下する傾向がみられ, 今後の検討課題である。

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