本研究は, 5歳児から小学校の2年生の補聴器装用児47人と人工内耳装用児56人を対象として, 聴覚障害児の音韻表象を規定する要因を検討することを目的に行われた。方法は, 音節抽出検査とした。材料は, 3文字語と5文字語からなる名詞が用いられ, 視覚的要因として音節可視度や語を構成する音韻の位置, 語の長さとした。その結果, 補聴器装用児の反応は, 音節可視度が音節抽出に効果を及ぼしていることを示唆しており, この傾向は年少時においてより顕著であった。一方, 人工内耳装用児は語中音の正反応率が低いなど, 健聴児と類似した反応が見られた。これらの結果より, HA児は, 音節可視度という視覚的イメージを手がかりとして音韻分析を行っていることが推察された。