2018 年 7 巻 1 号 p. 43-63
本研究では,異なる経済開発と環境の現状に置かれている中国の南北の都市を代表する北京市と杭州市を対象に,人々の環境意識と環境保全行動の実態を調査データの分析により解明すると共に,それぞれの環境意識の構造的特徴及びそれに影響を与える社会的・環境的要因を明らかにする.調査データの分析結果により,深刻な環境状況に直面している中国では一般市民の環境への関心が強いと同時に,環境問題の解決に科学技術の進歩に対する期待感が高いことも示された.また,杭州に比べ,北京では環境満足度が低く,環境悪化に対する不安感が高く,より多くの市民が環境保全行動に取り組んでいる傾向が見られた.これは両地域の環境現状の差が生み出したものと考えられる.多重対応分析の結果により,高年層,低学歴層,また低収入層に属する人々を中心的な対象とし,環境教育を強化し,環境意識を改善することが効果的であると結論づけた.また,ロジスティック回帰分析の結果により,地域の事情に合わせて環境保全活動を喚起する必要性が浮き彫りになった.