バイオメカニズム
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2部 生理・リハビリテーション
変形性膝関節症の進行が歩行中の膝関節キネマティクス・キネティクスに及ぼす影響
畑 亮輔西野 勝敏大森 豪永野 康治田邊 裕治
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2016 年 23 巻 p. 129-138

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抄録

変形性膝関節症 (膝OA) は, 膝関節の力学的環境の異常によって引き起こされる. この進行を予防及び治療するためには, 歩行などの荷重下動的状況において膝OAに作用する力学的要因を明らかにする必要がある. 本研究の目的は, 様々な膝OA進行度を有する対象の歩行中における膝関節を運動学・動力学的に分析することで膝OA進行に作用する力学的要因を検討することである. 対象は成人62名69膝とし, 膝OAの進行別にOA無 : 26膝, 初期OA : 16膝, 中高度OA : 27膝に分類した. 対象の歩行をモーション・キャプチャー・システムで測定し, 二方向X線撮影と三次元再構成法を用いて大腿脛骨運動を推定した. さらに, 膝の動力学的要素として下肢荷重線の脛骨近位関節面への通過点 (LAK point) やJoint reaction force, Joint momentを分析した. 中高度OAの歩行立脚期では, 膝屈曲量と前後変位量, LAK pointの前後移動量が有意に減少していたが, Joint reaction forceの内外側変化量は有意に増加していた. 初期OAでも, LAK pointの前後移動量が減じている兆候が見られた. さらに, 中高度OAのLAK pointは荷重応答期に内側へ急激に移動している傾向があった. 歩行立脚期では膝OAの進行に伴って上半身の重量が脛骨関節面の局所に集中しており, さらに膝関節内外側方向への力が増大していた. これらの力学的変化が膝OA進行に作用する可能性が示唆された.

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© 2016 バイオメカニズム学会
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