2020 年 25 巻 p. 9-20
本研究の目的は, 国内女子トップクラスのウエイトリフティング選手におけるスナッチの成功要因をバイオメカニクス的手法で明らかにすることとした. 2016年度全日本選手権大会の女子のスナッチを対象に, 同一選手で同一重量におけるスナッチの成功と失敗があり, かつ失敗ではバーベルを後方へ落下させた11名を分析した. 分析の結果, バーベルの挙上高は成否試技間で有意差は認められなかった. 一方で, 成功の方が失敗よりもバーベルの前方変位量, 後方変位量および最大前方速度が有意に小さかった. また, 成功の方が失敗よりもバーベルが最大高に達した後の身体重心の前方変位量が有意に小さかった. 以上のことは, 潜在的に挙上可能なスナッチの場合, バーベルの挙上高はスナッチの成功要因ではなく, バーベルの前後の変位量と挙上したバーベルの下への身体の移動方法が成功要因であることを示唆するものである.