抄録
チュウヒの採食環境について,2004年から2006年の越冬期に渡良瀬遊水地の 4か所で調査を行なった.池沼や水路,管理用の道路が縦横に走る人為的に造成されたヨシ原と隣接する乾燥したヨシ原のみの調査地とのあいだでチュウヒの探餌飛行の頻度を比較したところ,チュウヒは,2シーズンとも前者のヨシ原を後者より有意に多く利用した.前者の調査地では,後者に比べて,チュウヒの獲物となる鳥類が有意に多く記録された.また,調査地を100×100mのメッシュに区切り,チュウヒの探餌飛行の頻度を比較したところ,水路や池を含むメッシュが,植物だけのメッシュより有意に多く利用された.こうした水路や沼を含むヨシ原がチュウヒに良く利用されるのは,獲物となる生物が多いこととともに,チュウヒの狩りの方法である不意打ちハンティングに好ましい環境のためと考えられる.したがって,池沼や細い水路などが含まれる多様なヨシ原を保全し,創出することが,チュウヒの越冬環境を保全するにあたって重要と考えられる.