びわこ健康科学
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原著論文
運動時の消費エネルギー量は成体海馬ニューロン新生の鍵因子である
紅林 秀治小池 太郎森 徹自山田 久夫
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2022 年 1 巻 p. 41-49

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抄録

成体海馬におけるニューロン新生を促進する最も重要な要因は身体活動である.消費エネルギー量は身体活動量の基本尺度であるが,消費エネルギー量を用いてニューロン新生を解析した研究は見当たらない.そこで本研究では,成体マウスの飼育ケージに50 cm長の角度付きトンネルチューブを設置し,トンネル角度を変化させることで,登坂による消費エネルギー量と海馬ニューロン新生との関係を解析した.トンネル先端にはチミジンアナログのBrdUを含む給水瓶を設置し,2週間の飼育期間後,新生細胞を組織化学的に検出した.どのトンネル角度の場合でも,走歩距離(トンネル通過回数)・飲水量(BrdU摂取量)ともに有意差はなかった.2週間の飼育期間中に新生した細胞数を,BrdUを指標に解析したところ,トンネル角度が大きくなるほど,BrdU陽性ニューロン数が有意に多かった.また標識されたBrdU摂取細胞はニューロン前駆細胞に分化していることも確認した.トンネル長は一定であるため,トンネル角度増加に比例して登坂による消費エネルギーも増大する.本研究から,海馬ニューロン新生には,消費エネルギーが重要な因子であることが明らかになった.すなわち,消費エネルギーの大きい運動療法が,おそらくはmyokine等の因子を介して脳の機能維持に働く可能性を示唆している.

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© びわこリハビリテーション専門職大学
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