抄録
神奈川県立生命の星・地球博物館の維管束植物標本の今後の利活用に資する基礎資料とするため、所蔵しているタイプ標本と分類群数を計数し、採集都道府県、採集年、採集者などの採集属性に基づいた組成を解析した。46点のホロタイプを含む、183点のタイプ標本が生命の星・地球博物館には所蔵されている。日本全国と各都道府県で記録されている維管束植物の分類群数に対する所蔵標本の分類群数の割合を、分類群の取り扱いや構成種を考慮せずに分類群の数だけで算出すると、日本全体の維管束植物の分類群の数に対して、所蔵標本の分類群の数の割合は89.4 %であり、もっとも所蔵標本点数の多い神奈川県では95.4 %であった。採集標本点数の多い都道府県の標本の組成は、大場、古瀬、高橋の採集標本によって影響を受けていることが明らかになったが、静岡県と千葉県では、別の採集者の標本が多いことや、具体的な植物相調査が行われたことによることで、採集標本点数が多いことなどが示された。