食物繊維が膵臓リパーゼ活性に及ぼす影響を明らかにするため,胆汁酸で乳化したオリーブ油を基質とする酵素反応にキトサン,アルギン酸ナトリウム,コンドロイチン硫酸,ペクチンを添加してリパーゼ活性阻害を調べた. また,食物繊維の添加が基質の乳化状態に及ぼす影響を明らかにするため,胆汁酸で乳化した脂肪乳濁液(乳化脂肪)にキトサン,アルギン酸ナトリウム,コンドロイチン硫酸,ペクチン添加して,①油層状態の変化,②乳化状態の変化(解乳化),③これらの食物繊維と胆汁酸の吸着率を比較した.その結果,次のことが明らかになった. 1. キトサンはリパーゼ活性を阻害した.アルギン酸ナトリウム,コンドロイチン硫酸,ペクチンは,リパーゼ活性を阻害しなかった. 2. キトサン,アルギン酸ナトリウム,コンドロイチン硫酸,ペクチンを乳化脂肪に加えると,全ての条件において短時間で水層と油状層に分離した.しかし食物繊維添加 24時間後の油層の状態はキトサンと他の食物繊維では異なっていた.また,乳化状態もキトサンを添加した場合には大きな粒子が観察された. 3. キトサンの胆汁酸吸着率は 60% で他の食物繊維は 1~2% であった. 以上のことから,キトサンによるリパーゼ活性の阻害はキトサンが胆汁酸を吸着し基質の乳化状態が変化させたことにより生じたことが示唆された