武道学研究
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原著
中学校武道必修化について
—武道の礼法—
中村 民雄
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2011 年 43 巻 2 号 p. 2_1-2_11

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抄録

  平成20年3月28日,中学校学習指導要領が改訂され,保健体育科・体育分野の8領域はすべて必修となり,「武道」「ダンス」領域も必修化された。その内,運動に関する領域には,「武道に積極的に取り組むとともに,相手を尊重し,伝統的な行動の仕方を守ろうとすること」,「武道の特性や成り立ち,伝統的な考え方」の理解が盛り込まれている。
 そこで,「武道は,礼に始まり礼に終わる」とよく言われるので,武道の礼法について歴史的に明らかにしておく。
1.蹲踞礼
 江戸時代後期から幕末にかけて,相撲は「仕切」と称する蹲踞構えが行われた。これをヒントに剣術(剣道)では,向かい合わせた木刀(または竹刀)を前にして対峙し,蹲踞礼をした。柔術(柔道)では半身(または横向き)で片膝・片手をつく折敷礼をした。
2.立礼
 明治になり,国民皆兵の下,歩兵操練・軍隊教練の一環として西洋式の体操(兵式体操)が採用され,「気をつけ」の姿勢からの立礼が武道でも行われるようになる。
3.坐礼
 正坐—坐礼は,明治のはじめから修身科の作法において小学児童に広く行われていた。この作法と初心者用に行われていた一斉指導法とが加わり,授業の始めと終わりに整列して「正坐—黙想—坐礼」をする武道の礼法が形作られた。
 この時,「武道は,礼に始まり礼に終わる」という標語もかかげられ,武道の伝統として再構成されたのを,われわれは武道の伝統と呼んでいるのである。

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