武道学研究
Online ISSN : 2185-8519
Print ISSN : 0287-9700
ISSN-L : 0287-9700
柔道指導者の価値観に見られる文化差
松本 デービット竹内 外夫堀山 健治
著者情報
キーワード: 文化, 価値, 指導者, 柔道, 剣道
ジャーナル フリー

2001 年 34 巻 1 号 p. 1-10

詳細
抄録

様々な国の柔道指導者が持つ価値観について研究を行った。調査1ではアメリカ,ポーランド,日本という3力国の柔道指導者を対象に,価値観について柔道特有の価値観を測るために開発された質問紙と既存の価値観に関する質問紙を用いて調査した。調査1で得た日本人指導者のデータから,調査2を行うことにした。ここでは日本人柔道指導者と剣道指導者の持つ価値観の比較を行った。この調査の目的は,調査1で日本人指導者から得たデータ結果が柔道に限ったものなのか,あるいは日本の他の武道にも当てはまるのかを把握することにある。我々の知る限りこの二つの調査は,様々な国の柔道指導者が持つ価値観や柔道の指導を通して伝えられていると思われる価値観を調査した最初の研究である。
1.調査1の結果
日本人よりもアメリカ人やポーランド人の方が柔道の伝統的な哲学に関係する価値観を持っていることを示した。日本が柔道誕生の地であること,知性,モラル,体育を重視しているからこそ柔道が日本のみならず世界中で非常に人気があることを考えるとこれは非常に興味深い結果である。調査1の結果は,他の国に比べ日本では柔道がその意味を失いかけている可能性を示唆している。
2.調査2の結果
剣道指導者が伝統的価値観をより支持する一方で,柔道指導者は達成感といった価値観を支持している。この相違をさらに綿密に調査したところ,大勢の学生を指導する大学柔道指導者ほど「名誉」,「精神的調和」,「公正」などの伝統的価値よりも,「愛国心」,「達成」,「個性」などを重視する傾向があることが分かった。日本の大学では,武道の伝統的価値観が柔道を純粋にスポーツや体育として扱う価値観に取って代わられていると推察される。

著者関連情報
© 日本武道学会
次の記事
feedback
Top