地質調査研究報告
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論文
奥会津地熱地域・中新統滝沢川層にみられる変質 -貯留槽母岩の地熱変質とその地化学的特徴-
関 陽児
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2001 年 52 巻 11-12 号 p. 493-571

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抄録

奥会津地熱地域に分布する下部中新統滝沢川層を主な対象として,貯留槽深度における,現在の地熱活動による母岩の変質を記載するとともに,変質に伴う化学成分の移動傾向を明らかにし,変質帯の成因を考察した. 滝沢川層は地熱系の貯留槽深度(地表下1000~2000m) および地熱系外西方の地表に広く分布し,流紋岩~デイサイトの溶岩および同質火山砕屑岩からなる. 地熱系外の滝沢川層は,イライト,緑泥石を特徴鉱物とし基質の脱ハリ,粘土鉱物化,方解石化,黄鉄鉱化を伴う広域的な続成変質を受けている. 地層温度約100℃以上の領域を現在の地熱系の温度影 響範囲内(「地熱系内」)とみなすと,そこに分布する滝沢川層には,中新世の広域続成変質に現世の地熱変質が重複した結果,四つの変質帯,すなわちイライト・緑泥石+帯ーイライト帯,カオリナイト帯,混合層粘土鉱物帯が形岐されている.--- ---変質帯と地熱系の地質・温度・水理構造や流体の化学性状などを合わせて考察すると,系内にみられる多様な変質帯は,それぞれが系内に分化した物理化学条件やその変化に対応して形成されたと考えられる.すなわち,イライ卜・緑泥石+帯はC02ガスに富む高塩濃度の地熱流体が貯留槽中を移動しつつ周辺母岩中に浸透することにより,イライト帯は相対的に透水’性の高い岩石中を地熱流体が沸騰しつつ浸透することにより,カオリナイト帯は貯留槽深度周辺における気液分離で生じたC02 ガスが浅層の地下水に吹き込むことで生じた低温の炭酸酸性水と母岩との反応により,混合層粘土鉱物帯はカオリナイト帯が形成された場の最も外側で低温の浅層地下水により,それぞれ形成された.

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© 2001 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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