2002 年 53 巻 4 号 p. 409-420
福島県東棚倉地域に分布する上部中新統の久保田層から,39種より構成される浮遊性有孔虫化石群集を報告した.得られた群集は,浮遊性有孔虫の産出が乏しい最下部以外の久保田層が,暖流の影響下にある外洋で堆積したことを示唆している.年代指標種であるNeogloboquadrina acostaensisの産出,およびGloborotalia plesiotumidaの非産出,また久保田層中部がGloborotalia merotumidaの初産出イベントを含むことから総合的に解釈すると,この群集を含む層準はBlow (1969)の浮遊性有孔虫化石帯N.16帯に対比される.この浮遊性有孔虫化石年代は,すでに久保田層について報告されている凝灰岩の放射年代や,石灰質ナンノ化石,放散虫および珪藻化石層序に基づく年代と一致する.本研究では前述のG. merotumidaの初産出のほか,N. acostaensisの初産出,Globorotaloides falconaraeの初産出,そしてNeogloboquadrina cf. mayeriの終産出が認識された.これらの生層準は,日本周辺地域においてN.16帯を認識する有用な指標になると考えられる.