地質調査研究報告
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北上山地における花崗岩関連鉱床の硫黄同位体比
石原 舜三佐々木 昭
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2004 年 55 巻 1-2 号 p. 19-30

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抄録

北上山地の白亜紀 (一部古第三紀) 花崗岩類に関係する金属鉱床産の硫化物50個について新たにδ34S値を求めた.既報の8分析値とともに,その成因的意味について考察した.検討した鉱床と採石場は37である.鉱種別ではMo 鉱床が最も高く-0.5~+3.55 ‰δ34Sであり,そのうち花崗岩類を母岩とするMo鉱床は平均+0.7 ‰δ34S(n=4)であり,岩石δ34S値に最も近い.ベースメタル鉱床はスカルン型が主体であるが,日峰鉱床産の低い値を除くと,-3.4 ~+5.5 ‰δ34Sであり,Mo鉱床よりもばらつく. Au鉱床・ W鉱床の多くは堆積岩類中に分布するが,全般的に低い値を示し,特に枡内(Au),東磐井(Au-W)で顕著であり,ここでは堆積性の還元硫黄種の混入,またはそれとの同位体交換が考えられる.金鉱床は鉱石のAu/Ag=1を境に同比が高く硫化物に乏しい高Au/Ag型と,同比が低く硫化物に富む低Au/Ag型に分けられる.前者は-13.8~+2.8 ‰δ34Sで,一部で堆積性硫黄の貢献が考えられ,後者は-0.8~+5.5 ‰δ34Sの同位体比を持ちマグマ硫黄の寄与度が高かった.北上山地の花崗岩体内鉱床のδ34S値は,西南日本内帯のMo生成区の値よりも低い.その原因は北上山地の花崗岩マグマが後者よりも低いδ34S値を持ち,かつ鉱液の酸化度も低かったことによるものと考えられる.

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© 2004 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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