2004 年 55 巻 7-8 号 p. 183-200
埼玉県の中川低地地下には,最終氷期に形成された開析谷を埋積する沖積層が分布する.本報告では,中川低地中央部に掘削されたGS-SK-1 コア (GS-SK-1A,GS-SK-1N,GS-SK-1T)から得られた堆積相,放射性炭素年代,堆積物物性をもとに,中川低地における沖積層の層序,堆積環境を明らかにした.GS-SK-1Aに認められる沖積層は次のような河川‐浅海性堆積物であることがわかった.すなわち,下位から (1) 河川チャネル充填堆積物である礫‐砂礫層,(2) 氾濫原‐塩水湿地堆積物である砂泥互層,(3) 泥質干潟堆積物である貝化石を含む塊状泥層,(5) 内湾 (プロデルタ‐デルタフロント)堆積物である巣穴状生痕やリップル砂層を含む塊状泥層,(6) 河川チャネル充填堆積物‐氾濫原堆積物である砂泥互層から構成される.19点の放射性炭素年代(48,350~1,270 yrBP)はこれらの開析谷充填堆積物が,1回の海進・海退に伴って形成されたことを示唆する.そして堆積物物性 (N値,泥分含有率,湿潤・乾燥密度,帯磁率,含水比,L*a*b* による色調)は堆積相やその境界に関連して変化することが明らかになった.