2005 年 56 巻 3-4 号 p. 137-146
四国三波川帯・瀬場地域には,変斑れい岩の固体貫入に伴う接触変成作用によって生じたとされるエクロジャイト質塩基性片岩が報告されていた.その後の調査研究により,エクロジャイト質塩基性片岩(またはその構成鉱物であるオンファス輝石)が変斑れい岩から離れた地域にも多産すること,及び多重変形とオンファス輝石成長時期の関係が明らかにされた結果,瀬場地域のエクロジャイト質塩基性片岩はすべて,単一の広域変成作用によって生じたものと考えられるようになった.この研究史から,高度変成地域の野外調査では:1)変成履歴の鍵を握る鉱物の存否,特にその地質図スケールでの分布範囲の特定には細心の注意を払わなくてはならないこと;2)岩石学に加えて,構造地質学の視点,特に多段階変形の正確な分類が必要となることが示唆される.