地質調査研究報告
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論文
物理定数からみた飛騨花崗岩類
金谷 弘大熊 茂雄
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2005 年 56 巻 9-10 号 p. 303-313

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抄録

本研究は日本列島に分布する花崗岩類を対象にそれらが持つ物理定数,すなわち密度・孔隙率・磁化率・自然残留磁化そしてQn比(K önigsberger ratio)などを系統的に測定, 集約し, これら花崗岩類が共通して持つ性質や, 各地域差, それぞれの形成年代がもつ特有の性質を明確にし, 地質構造の解明や, 公害, 環境問題, 災害予知など各方面に必要な基礎資料を提供することを 目標にしている. 今回は富山, 石川, 福井, 岐阜そして長野の各県にまたがって露出する飛騨花崗岩類約130個(第1図)の試料を対象に測定結果を取りまとめた. これら花崗岩類は1,古期花崗岩類, 2, 眼球状マイロナイト類, 3, 斑れい岩類, 4, 船津花崗岩類とし, 4を下之本型, 船津型として, 最終的に5 種類に区分けした. これら5種類の平均密度の変化範囲は2.62~2.85(x103 kg/m3 =g/cm3)で古期花崗岩類が最も小さく, 斑れい岩類がもっとも大きい. 孔隙率は0.4~0.6% でこれまでにみられた他地域との差はほとんど認められない. 磁化率は密度が2.60 ~2.95 の変化に対しその分布域を上限,下限の2直線で囲むと, その直線は密度の増加に対し約10倍増加し,東北地方北部(金谷・大熊,2003)にみられる磁化率‐密度グラフ中の上限, 下限の2直線にはさまれる範囲と一致し, 北上山地花崗岩類に近いパターンを示す. 飛騨花崗岩類は, 常磁性造岩鉄鉱物によるとみられる磁化率を示す試料の割合は非常に少ない. また, Qn比は0~0.3と低くその平均値も0.12 と非常に低い.

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© 2005 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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