抄録
新第三紀における日本海拡大イベントに関連した回転運動プロセスを調べるため,富山県八尾地域に分布する下部‐中部中新統の八尾層群にて古地磁気学的研究を行った.調査地域における山田川ルート,和田川ルートで得られた火山岩,堆積岩から段階消磁実験を行った結果,16地点の安定した初生磁化成分が分離できた.これまでに八尾地域で報告されている全37地点の古地磁気データを統括すると,傾動補正後の地点平均方位において,正帯磁を示すものが10地点,逆帯磁を示すものが27地点得られた.回転運動の経過を詳細に知るために,各層準に対する偏角の推移を調べた結果,経時変化が見られ,時計回りの回転運動の記録が捉えられていることが明らかになった.累層ごとに分けた平均方位の偏角の比較では,医王山層と黒瀬谷層の間で約30度の有意差を示す.本論で確立した古地磁気層序に基づくと,医王山層と黒瀬谷層は前期中新世末期に対比される.また,古地磁気方位と岩相変化を比較すると,急激な回転運動は火成活動の盛んな時期から海進に伴う堆積物供給期間の転換期にあたる.日本海拡大イベントには,その後半に急激な回転運動のフェーズが存在し,その結果,本研究地域である日本海沿岸の堆積盆に顕著な環境変化をもたらした可能性がある.