地質調査研究報告
Online ISSN : 2186-490X
Print ISSN : 1346-4272
ISSN-L : 1346-4272
論文
黒鉱型・別子型などの火山性塊状硫化物鉱床のインジウム含有量
石原 舜三遠藤 祐二
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 58 巻 1-2 号 p. 7-22

詳細
抄録

黒鉱鉱床(35 試料),柵原鉱床(10 試料),田老鉱床(4 試料),下川,土倉と槇峰鉱床(6 試料),別子型鉱床からの 25 試料について硫化物鉱石成分を誘導結合プラズマ質量分析法で測定し,インジウムの資源的評価を実施した.北鹿盆地の黒鉱鉱床群では東部の小坂内の岱,花輪,古遠部などがインジウムを多く含み,かつ亜鉛よりも銅との相関性が良い特徴を示し,インジウムが四面銅鉱系サルフォソールトに含まれている可能性を暗示する.小坂鉱山では,内の岱鉱石の含有量,選鉱産物の含有量に基づき約 50トンのインジウムが鉱床の含有量として推定されるが,これは世界的にインジウムを生産している大鉱床より 2 桁低く,我が国にはインジウムに富む塊状硫化物鉱床はないと言える.別子型鉱床の個々の分析値やインジウムに富む亜鉛精鉱で明らかなように,このタイプの鉱床ではインジウムは閃亜鉛鉱に含まれている.佐々連・白滝鉱床の亜鉛精鉱はインジウムに富むが,原鉱の Zn 品位は 0.n%であるから,資源的には期待できない.二畳紀流紋岩中に胚胎する柵原鉱床からは最高値 207 ppm In が得られた.当鉱床に見られるインジウム異常は母岩の流紋岩類か後期白亜紀の貫入岩起源と推察される.別子鉱床下部には散点的な異常(167 ppm 以下)が認められるが,これらは中新世の西南日本外帯のチタン鉄鉱系花崗岩の貫入に伴って割れ目規制を受けた熱水鉱化作用が生じ,インジウムが付加されたものと考えられる.

著者関連情報
© 2007 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
前の記事 次の記事
feedback
Top