地質調査研究報告
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中部地方の後期白亜紀領家帯花崗岩類の化学的性質の再検討
石原 舜三
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2007 年 58 巻 9-10 号 p. 323-350

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抄録

中部地方の領家帯において後期白亜紀の斑れい岩類(メタベイサイト)6 試料,花崗岩類 75 試料の化学的性質の再検討を偏光蛍光 X 線分析法で実施した.花崗岩類の分析結果はIタイプとSタイプに 2 大別することができる.Iタイプの地帯別平均値を中央構造線から北方へ比較すると,新城‐設楽帯(平均 SiO2 含有量 60.1 %),足助帯(同 64.2 %),豊田‐明智帯(同70.0 %),猿投山‐小原帯(同73.0 %),瀬戸帯(同75.2 %)と,北方へ珪長質となる.その原因はマグマの結晶分化作用よりも発生源である地殻中下部のinfracrustalな起源物質の相違を反映したものである.斑れい岩類は南部にやや卓越し,花崗岩類との混交現象も見られるが局在的で,恐らくマントルからの熱の運搬媒体として重要であったと思われる. 岡崎‐武節帯の柘榴石含有白雲母黒雲母花崗岩(武節花崗岩)はアルミナ飽和度(A/CNK)上はSタイプに属するが,アルカリ比についてはIタイプである固有の性格を持っている.この岩体は領家変成岩類の高変成帯に貫入することから,高熱流量下で supracrustal な大陸地殻まで溶融温度が達したために生じたものと考察された.領家変成帯南部にはルーフ岩石が残っているが鉱床は存在しない.その原因はその固結場所が 15 km に達するほど深かったため,及び武節花崗岩では珪長質ではあるがマグマ分化度が低かったために鉱化成分を含む熱水が発生・循環しなかったためと思われる.

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© 2007 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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