地質調査研究報告
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論文
阿武隈高原中央部の後期白亜紀花崗岩類の化学組成の横断面変化-再検討
石原 舜三Bruse W. Chappell
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2008 年 59 巻 3-4 号 p. 151-170

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抄録

 阿武隈高原の中央部で後期白亜紀の花崗岩類の主成分と微量成分とを偏光蛍光分析法により分析し、中部地方の領家花崗岩類との比較を試みた。阿武隈花崗岩類は角閃石- 黒雲母花崗閃緑岩~黒雲母花崗岩が主体で、中部地方に多い白雲母- 黒雲母花崗岩類は少ない。阿武隈花崗岩類はハーカー図上でナトリウムとアルミニウムに富み、カリウム・ルビジウム・鉛・バリウムなどに乏しい。これらの性質は、阿武隈花崗岩質マグマは上部マントルからのマグマや熱の供給を受けて、成熟度が低い島弧地殻で生成した可能性を示している。  阿武隈花崗岩類は中部地方と同様に、地殻起源炭素により還元されたチタン鉄鉱系から主に構成されるが、一部とくに最東部で磁鉄鉱を含む中間系列花崗岩類が産出する。その近傍の八茎タングステン鉱床直下の黒雲母花崗岩はチタン鉄鉱系であり、中部地方の苗木花崗岩におけると同様にタングステン鉱床は還元的花崗岩と成因的に密接である。第II 帯の花崗岩類はハーカー図上でカルシウムに富み、カリウム・ルビジウム・鉛・イットリウム・セリウム・ランタンなどに乏しい。ここではやや高いSr/Y が得られており、深所からのアダカイト質珪長質マグマの供給が考えられるが、大陸地殻通過時に地殻起源マグマと反応した可能性が大きい。

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© 2008 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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