抄録
イオン吸着型希土類鉱化作用の資源ポテンシャルを評価することを目的として、ラオス中南部における花崗岩類とその風化殻の地球化学的特徴を本稿において報告する。調査地域の花崗岩類は主に黒雲母±普通角閃石花崗閃緑岩および花崗岩であり、総希土類含有量は低ないし中程度 (36-339 ppm) である。これらの花崗岩類は中国南部や西南日本の重希土類に富む花崗岩に比べると軽希土類に富み重希土類に乏しい。この重希土類の濃集における違いは花崗岩としてマグマの分化が十分でなかったことに起因すると考えられる。花崗岩類の風化殻は全体的に発達しており、カオリンやイライトに富む。風化殻は上部から下部に向かってA、B、C層に分類され、B層は原岩に比べて希土類に富むが、A層とC層は一般に希土類含有量が減少するかわずかに増加する程度である。比較的高い希土類含有量を示す風化殻はアタプー地区とサイソンブーン地区において確認される。地球化学データと段階溶出実験結果は、これらの風化殻において希土類の濃集がイオン交換性粘土鉱物や希土類リン酸塩に起因すること、風化によって軽希土類に比べ重希土類が選択的に粘土鉱物に吸着されていることを示唆する。