地質調査研究報告
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北海道十勝沖前弧海盆東縁を流下する釧路海底谷上流域の 「しんかい6500」 による潜航調査
辻野 匠
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2010 年 61 巻 3-4 号 p. 125-136

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抄録

 2006年9月から10月にかけて「しんかい6500」により釧路海底谷上流部(着底点:北緯42°29.4385’東経144°34.2675’)の潜航調査が行われた.釧路海底谷は北海道南東沖に発達する前弧海盆の北東縁を流下する全長223 km の海底谷で,比高数100 m の下刻が全域で発達している.潜航地点では新第三系-第四系の地層が露出していると音波探査から予測されている.本報告では潜航での目視観察及び採取した岩石試料の記載を行い,本号で報告されている微化石年代をもとに音響層序を構成する地層の年代を推定した.潜航調査では谷底の水深1814 m に着底した後,南岸の側壁を登り,水深1313 mの肩で離底した.ルートの地形断面は3つの急斜面(崖)とその間の緩斜面とに区分でき,急斜面では露岩が認められた.谷底はリップルの発達したシルトに覆われており,側壁は露岩域以外はすべて泥に覆われていた.最初の崖は側壁基部の1795–1770 m にあり,極細粒砂岩とシルト岩の互層が露岩していた.2番目の崖は側壁中部の1580–1550 m にあり,塊状のシルト岩が1 m 程度の層厚で成層していた.最上部の崖は側壁上部の1415–1370 m にあり,数10 cm–数 m の段差からなるステップ状の地形が発達し,塊状の泥岩が断続的に露出している.採取した岩石のほとんどは半固結であり,珪藻遺骸と陸源砕屑物からなっている.岩石の微化石年代は,側壁基部の露頭では後期鮮新世の前期,2番目の露頭では後期鮮新世の後期,側壁上部の露頭では前期更新世であった.

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© 2010 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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