地質調査研究報告
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紀伊半島東部,三重県多気郡大台地域における 三波川帯-秩父帯境界
青矢 睦月
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2010 年 61 巻 5-6 号 p. 195-202

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抄録

 紀伊半島東部,三重県多気郡の大台地域において三波川帯と秩父帯の境界部の野外調査を行った.この調査で三波川帯の泥質岩(泥質千枚岩)と秩父帯の泥質こう滝たき岩(泥質混在岩)が直接する露頭(神露頭)が見出され,泥質千枚岩が泥質混在岩よりも高い結晶化度を示すことが肉眼観察から示唆された.このような泥質岩の見かけ結晶化度の差違に加え,大局的な原岩組み合わせの相違をも用いて三波川帯-秩父帯境界を決定した結果,従来の見解と異なり,秩父帯泥質混在岩は南傾斜の構造境界面を介して三波川帯泥質千枚岩の上位に位置することが示唆された.また神滝露頭での変形構造観察から,両帯の定置は,東西伸長を伴う三波川帯の主変形期,Ds期の最終期に既に完了していたことが推論された.神滝露頭は三波川帯と秩父帯の初生的な構造関係を保存した露頭であろうと推察される.

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© 2010 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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