2011 年 62 巻 1-2 号 p. 3-46
中川低地南部の開析谷中軸で掘削した沖積層ボーリングコア試料(GS-MHI-1)を用いて,堆積相,珪藻化石群集組成,物性,AMS放射性炭素年代値について検討した.その結果,下位から,網状河川流路,蛇行河川の氾濫原,潮汐の影響した流路,潮汐の影響した上方深海化する浅海底,上方浅海化する浅海底,河川と潮汐の影響した上方浅海化する浅海底,現世河川流路~氾濫原の合計7つの堆積相を認定した.これらの堆積相を開析谷西縁部での解析結果及び既存土質柱状図と対比することによって,下位から,網状河川,蛇行河川,エスチュア リー,デルタの合計4つの堆積システムを開析谷の横断方向で認定した.その結果,蛇行河川システムによる地層はほぼ水平に分布するのに対して,エスチュアリーとデルタシステムによるものは非対称に分布することを推定した.この沖積層上部の軟弱な海成泥層は谷の西縁辺から中軸へと徐々に形成されたものであり,この非対称な分布は建造物の構造・工法や大規模地震による強震動,地盤沈下被害などに影響をもたらす可能性がある.