地質調査研究報告
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論文
環境ガンマ放射線測定用井戸型ゲルマニウム検出器の特性と 原発事故によるバックグラウンド汚染
−地質調査総合センターに設置されたシステムを例に−
金井 豊齋藤 文紀
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2011 年 62 巻 9-10 号 p. 357-369

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抄録

 地質調査総合センターにおいて低レベル測定を目指した新たなガンマ線測定システムを立ち上げ,更新機器と従来の機器の特性の違いを種々検討し,以下のことを明らかにした.
 デュワー瓶と検出器との配置はJ 型のクライオスタットとし,不純物の少ない無酸素銅などを検出器素材に使用し,さらに測定室空間を小さくすることなどは,バックグラウンドの低減に有効であった.
 検出器と試料とのジオメトリーの関係は,試料容器において1 mmの高さ変化に伴い,最大でも約1 %程度のピーク強度の変動が見られ,試料高さ補正をmm単位で行うか,高さをそろえる必要がある.点線源を用いた実 験や井戸内の点線源位置だけを考慮したモデル計算では,実際の計数率の変化を表すことはできず,試料自体が厚 みを持つことによって生じる自己吸収による検出効率の影響因子の方がはるかに大きいことが判明した.
 本システムにおいては,バックグラウンドにPb-210が検出されないため定量下限が低く,低濃度の堆積物中のPb-210 測定において良好な測定が可能である.しかし,原発事故によって生じた検出器汚染は,繰り返し洗浄によって低減したものの,Cs-137の汚染に関しては堆積年代算出の利用において注意が必要である.

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© 2011 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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