2011 年 62 巻 9-10 号 p. 371-388
環境中におけるコロイドの特性把握の研究の一環として,限外ろ過法による試料の濃縮・分離に関してモデル実験−シミュレーション計算によりその手法の適用性・妥当性を検討した.クロスフローろ過法(CFF)では,溶存粒子の濃縮が可能であるが,粒子濃度の定量においては,濃縮係数の補正だけでは不十分であり,フィルターの孔径に近い粒子(保持係数Rc が0<Rc<1 のもの)では十分な分離が困難であるため,時系列に沿った濃度変化から粒子濃度が求められる.モデル実験計算の結果では,ある成分のいろいろな粒径の混合した試料を分離する際には,0<Rc<1 に該当する粒子の割合によって粒径分離の良否が決まることが明らかとなった.厳密な定量には時系列解析が必要であるが,簡便・迅速さから見た場合には適度な濃縮係数での分離でも粒径の大きなコロイド粒子の過大評価とはなるものの,地層処分においてより安全側に評価できる.