2013 年 64 巻 1-2 号 p. 51-57
ベトナム最北部のMau Due 鉱床はデボン紀の不純なドロマイト質頁岩中の裂罅充填性の輝安鉱鉱床である.その地化学的な研究によると,その鉱化成分は主としてS 及びSb からなり,若干のAs・ベースメタル成分を伴う.土壌中のSb 含有量は変化が激しく,これは鉱石成分の混在によるものと考えられる.雨季 (5−9 月) と乾季 (10−4 月) に分けられた採取試料の分析結果,土壌のSb 平均含有量は雨季932 ppm,乾季342 ppm であって雨季で高く,一方河川堆積物では,雨季2,563 ppm ,乾季2,504 ppm であり,両者で著しく増加する.As はSb と同様な挙動をとり,その含有量は雨季/乾季の土壌において29/26 ppm と,絶対量が少ない.河川堆積物では68-67 ppm に増加するが,この事実はSb,As が微細な硫化物として存在することを示唆している.日本の地向斜帯の堆積岩と比べてベトナムの堆積岩類は,微量成分としてのSb に富んでいる可能性がある.