地質調査研究報告
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論文
地球化学標準物質(堆積物シリーズ)に逐次溶解法を適用した際に生じる鉱物組成変動
Atsuyuki OhtaRan KubotaTakashi Okai
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2014 年 65 巻 3-4 号 p. 23-36

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抄録

我々は Community Bureau of Reference (BCR)によって確立された逐次溶解法を, 8 つの日本の地球化学標準物質へ適用することを試みた. この方法は, step 1 で交換態・炭酸塩態, step 2 で鉄水酸化物態・マンガン酸化物態, step 3 で金属硫化物態・有機物態をそれぞれ分解抽出する事を目的としている.本研究では,未処理の試料と各stepで抽出作業を行った後の残渣試料に対してX線回折(XRD)パターンを調べることで,抽出目的相が適切に分解されているかを確認することを目的とした. JSd-1 とJSd-3 に対してBCR法を適用した際, XRDパターンには有意な変化は認められなかった. この結果は,これらの物質に含まれる元素の多くがBCR 法によってほとんど抽出されなかった事実と調和的である. これに対し, JSd-4, JMs-1, JMs-2 に含まれる方解石由来のピークは step 1 適用後にXRDパターンから全て消滅した. この結果は, step 1の目的相が十分に分解されたことを示す. JLk-1 や JMs-2 では,高 い濃度の鉄とマンガンが step 2 で抽出される. しかし, 鉄水酸化物態・マンガン酸化物は明瞭なピークをXRDパターンに示さないため, これらの物質が step 2 で十分に分解されたかどうかを明らかにすることは困難であった. 一方, JMs-1 中のパイライトのピークが step 3 抽出後に消滅した事から,硫化物がこの過程で適切に分解される事が明らかとなった. また, JSO-1 において, step 3 抽出後に石英や斜長石のピーク強度(X線回折強度)が大きく増加することが認められた. step 3 以前では有機物が鉱物表面を厚く覆っているために, 鉱物からのX線回折強度を下げていたためと推測された. 従って,間接的な証拠であるものの, step 3 抽出手順において有機物が適切に分解除去されたと言える. これらの結果より, BCR法によって地球化学標準物質から目的物質を適切に分離抽出することが可能であることが確認された.

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© 2014 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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