地質調査研究報告
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レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)による ケイ酸塩鉱物及びガラスのための微量元素分析
山崎 徹山下 康平小笠原 正継斎藤 元治
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2015 年 66 巻 9-10 号 p. 179-197

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抄録

産業技術総合研究所 地質調査総合センター共同利用実験室(GSJ-Lab)設置のLA-ICP-MS により,珪酸塩鉱物及びガラスの微小領域の微量元素定量分析プログラムを構築した.検量線作成のための標準試料には,アメリカ国立標準技術研究所(NIST)の標準ガラス物質 (NIST 613 及び611) を使用し,妥当な測定条件としてHe キャリアーガス流量0.5 L min-1,レーザーのスポット径100 μm,パルスレート5 Hz, エネルギー40 % (fluence ~2.0 J cm-2) を設定した.測定精度検証のためNIST 615 及びNIST 613 を未知試料として測定した結果,45Sc から238U までの45 元素について,レーザースポット径100 μm – 10 μm において繰り返し測定精度(reproducibility; precision)はほぼ30% 以下であった.標準試料の値からの差を示す確度(accuracy)は,NIST615 ではSc,Mn,Ni,Ge 以外の元素では,一般的に定量分析における精度の許容範囲の目安とされている< 30 % を下回り,NIST613 では,レーザースポット径20 μm と10 μm のTl,20 μm のCd を除く全ての元素が30 % 以下であった.天然の単斜輝石,角閃石及び斜長石を測定した際に想定されるレーザーピットの深さは,通常の岩石薄片試料において鉱物の掘り抜きは生じない程度であることが確認された.一般的な岩石学的,地球化学的議論に供するために34 元素,27 元素を同時に測定可能な2 つのセットをさらに作成し精度・確度を検証した結果,34 元素のセットではレーザースポット径40 μm 以下のCr,Mn,Ni,Cs において確度が30 % を超えるものがいくつかあるが,その他は30 % 以下であった.27 元素のセットでは,Sc を除き全てのレーザースポット径で確度は 30 % 以下であった.

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© 2015 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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