地質調査研究報告
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高知県須崎湾における潮位観測-1946 年南海地震前の海水位変化の検証のため-
梅田 康弘板場 智史細 善信
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2016 年 67 巻 1 号 p. 11-25

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抄録

四国太平洋沿岸部では,1946年南海地震の数日前から海水位の変化が目撃されていた.高知県の須崎湾内では,本震直前に2 ~3 mの海水位低下も目撃されていた.このことから地震前に外洋で小規模な津波が発生していた可能性が指摘された.津波の発生を仮定するには,周期や振幅に関してある程度の定量的な情報が必要である.外洋から須崎湾内に津波が侵入した場合の増幅度と卓越周期を推定するため,須崎湾の7 カ所で,2010年11月から15か月間,海水位変化の観測を行った.外洋における観測は,他機関によって行われており,2011年東北地方太平洋沖地震による津波が観測された.土佐湾の水深100 mと,南海トラフに近い1,500 ~2,300 mで観測された津波複振幅は,須崎湾に入ると,それぞれの複振幅で最大8.6 倍と21倍増幅されることがわかった.50分と85分という長い卓越周期が観測されたが,この周期は須崎湾より外洋での共振周期と推定された.これらの観測結果は,地震の前に小規模な津波が発生していたという仮説を支持するものである.

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© 2016 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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