X線CTスキャナによる地質標本の観察は,非破壊・無侵襲でその内部構造を知ることができるため,標本を対象とした研究に不可欠な手段となりつつある.一方,3Dプリンタは,近年その普及がめざましく,出力サービス等が急速に充実した.このような背景を受け,X線CTスキャンデータを基にして3Dプリンタで造形することにより,標本の模型製作が容易になった.印象材で標本の型を取ってそれに樹脂等を流し込む従来の「アナログな」模型(レプリカ)製作手法と比較し,X線CTスキャンデータと3Dプリンタの組合せによる「デジタルな」手法では,拡大または縮小が自在に可能でうたのぼりある等メリットが大きい.このほど,地質標本館に収蔵されている化石哺乳類・デスモスチルス歌登第3標本(第1図:山口ほか,1981;Uno and Kimura,2004)の頭蓋骨(GSJ F07745- 1)と下顎骨(GSJ F07745-2)のX線CTスキャンデータから,3Dプリンタを用いて2.5分の1(0.4倍)サイズの半透明樹脂模型(本号表紙,第2図)を製作したので,概要を報告する.