2017 年 68 巻 1 号 p. 17-21
北海道沼田町からは大型水生脊椎動物化石が多産し,それらの化石の時代論は細かく議論されている.そほろかおしらりかの多くは鮮新世の幌加尾白利加層上部に由来する化石 であり,同層の下部から産出した化石記録の報告は少ない.幌加尾白利加層下部の砂質泥岩中には炭酸塩ノジュールが多数含まれ,産出地点から見てそれらの炭酸塩団塊の一つとみなし得る鯨類化石(NFL 2083)を含む転石中の珪藻化石を分析した.その結果,NFL 2083は,Neodenticula kamtschaticaを産出せずNitzshia pliocena を産出しThalassionema schraderi をわずかに産出することから,Rouxia californica帯(NPD 7A)の下部に位置づけられ,その年代は7.7–6.8 Ma(中新世後期)に相当する.これによって本試料の時代が明らかになるとともに,その層序学的位置づけについて次のような問題があることがましけわかった.NPD 7Aは幌加尾白利加層の下位の増毛層に 相当することが知られているが,NFL 2083の産地には下部幌加尾白利加層の下部が分布している.この不一致に対しては2つの可能性が考えられる.1.NFL2083を含 むノジュールは,もともと増毛層中で生成し,幌加尾白利加層中に二次的にもたらされた.2.調査地域付近で幌加尾白利加層最下部とされてきた地層は,年代的には本試料産出地点の西方に分布する増毛層に相当する.