山形・福島県境に位置する第四紀の大型複成火山である吾妻火山について,同位体希釈法による38溶岩試料のK–Ar年代測定を行い,火山活動の時間的空間的変遷を明らかにした.吾妻火山は安山岩の溶岩流が主体の火山であり,一部の火山体を除き,岩石学的にはほとんど区別できない.年代測定に基づき,完新世に形成された浄土平火山を含め,12の火山に区分した.最も古い活動は 1200 ka 頃に東側で開始し,徐々に西方へ移動し,700 ka 頃に西端で活動,その後,再び東側に時間をおって活動中心が移動している.従来は,吾妻火山の活動は300 ka 以降,完新世の活動までの長い休止期が存在するとされていたが,その期間にも活動は継続しており,現在まで長い休止期を挟まずにほぼ継続的に活動が続いていることが明らかになった.