2020 年 71 巻 4 号 p. 313-330
青森県下北半島の北東部では,北部北上帯に属する付加体が,桑畑山地域,片崎山地域,大森地域に分布している. 桑畑山地域の付加体については,後期ジュラ紀の岩屋ユニットと前期白亜紀前半の尻労ユニットに区分されるなど,こ れまで多くの研究がなされているものの,片崎山・大森地域の付加体については,大森地域の砂岩から砕屑性ジルコン U–Pb 年代が得られているほかは,詳しいデータはほとんどない. 本研究ではジルコン年代が測定された砂岩近傍の泥岩から Eucyrtidiellum cf. pyramis をはじめとする後期ジュラ紀 (おそらくキンメリッジアン期)の放散虫化石が見出された.この泥岩の化石年代と砂岩のジルコン年代とは大差なく,また 泥岩と砂岩との層準の間に不連続構造面も確認されないことから,両者の堆積年代に大きな乖離はないと考えられる. 岩相・地質構造・放散虫化石年代から,片崎山・大森地域の付加体と,桑畑山地域の岩屋ユニットは対比可能である. つまり,下北半島北東部の付加体は,後期ジュラ紀に形成された桑畑山地域の岩屋ユニット及び片崎山・大森地域の未 命名ユニットと,前期白亜紀に形成された桑畑山地域の尻労ユニットとに区分される.