植物分類,地理
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カヤツリグサ科の分類学的研究 11
小山 鐵夫
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1959 年 18 巻 1 号 p. 20-26

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抄録

台湾のハナビスゲは今迄印度の C. filicina に同定されてゐたのであるが,果嚢に明らかに毛のある点で正しくはマレーシアの C. Rafflesiana とすべきものである。嘴の切込みも C. filicana より浅い。しかしハナビスゲ自体はマレーシアの C. Rafflesiana 其の物とは多少の形態的なずれがあって,分布上北に寄った一変種と考へられ,その学名を C. Rafflesiana var. pseudo-filicina と定める。29. 本文第29図に示した様に分布域がオーストラリヤと日本周辺とに両分された著しい不連続分布を示すスゲ・アハボスゲ・コウボフシバの3種がある。これ等の3種に就いて言へる事は,南半球と北半球との個体の間に殆ど形態的な分化が見られないと言ふ事であって,分化のかなり進んでいるヒマラヤ日本型のスゲ(小山:植物学雑誌72巻312-322)と対照的である。この両分された分布の成因については所謂南極起源説を取り上げると興味が深い。即ちこれは南からマレーシア経由で北に分布したが,現在ではマレーシアの分布圏が消失したと考へられる。その論拠としてもアハボスゲがニューギニヤにある事は興味深く,又斯様な分布の前段階が所謂マレーシア日本型の分布と見ると,後者に属する植物がインドに分布してゐない点もも了解出来ると思ふ。

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© 1959 日本植物分類学会
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