植物分類,地理
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東亜羊歯植物考察14
田川 基二
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1937 年 6 巻 3 号 p. 154-168

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抄録

173. 台湾のタイワンオホカグマ Microlepia grandissima HAYATA は印度からビルマ,支那(雲南)にあるMicrolepia platyphylla (DON) J.SM. と同種である.早田先生は葉が大きく羽片や小羽片の切込が浅いというので別種にせられたが,こんな特徴だけでは種を分つことは出来ない.それに筆者には葉が大きいとも切込が浅いとも思われない.174. タニヘゴモドキ(新称)Dryopteris kominatoensis TAGAWAはタニヘゴD. tokyoensis C. CHR. とヲクマワラビD. unihormis MAKINO との中間形を示す種類で,FAURIE が陸奥の小湊で採集したものである.葉柄の鱗片が淡褐色薄質全辺であること,羽片の中肋との間の角が小いこと,〓堆が比較的大きく上部羽片の中肋の両側に1乃至3列に並んでいることはタニヘゴと同じであるがヲクマワラビには一致せず,又葉片が下の方であまり狭くならず,羽片が羽状深裂又は全裂であることはヲクマワラビに一致するもタニヘゴには似た居ない.或いはこの両種間の雑種ではないであろうか.児玉親輔氏はFAURIE の標本にクマワラビD.lacera O. KTZE. とヲクマワラビとの中間種と書き残している.タニヘゴに比較したのは卓見であると思う.筆者の知る限りでは小湊が唯一の産地である.175. ホウライイタチシダ(新称) Dryopteris cacaina TAGAWA はナガバノイタチシダD. sparsa O. KTZE. に似ているが,葉は小さく,葉柄の鱗片は廣卯形,小羽片は円頭又は鈍頭,〓堆の位置は中肋に近いから区別することができる.原標本は私が阿里山の沼ノ平とタータカとの間で採集したものである.私はなお台中州の八通関と東浦との間や花連港庁下の関ヶ原,合歓両駐在所の間でも採集したし,又大井次三郎氏が八通関と楽楽との間で採集せられた標本もある.2000米前後の針葉樹林中に相当よく繁茂しており,屋久島では小杉谷附近の杉の森林中にある.このように分布している羊歯類には,とかく印度北部から支那西南部に竟つて分布している種類と共通のものが多いので,この地方のものを調べてみると,はたしてDryopteris Hendersoni C. CHR. がでてきた.全く同種であると思う.屋久島以北の日本で本種に相当するものはホホノカハシダD. shikokiana C. CHR.である.これは葉が小さくて最大のものでもホウライヒメワラビの中ぐらいのものほどの大きさしかなく,小羽片の裂片は切込が浅く,〓堆には包膜がない.ホウライヒメワラビはホホノカハシダやキヨズミヒメワラビD. Matsumurae C. CHR. アリサンヒメワラビD. thrichorhachis HAYATA と共に鱗片や毛に共通の特徴があるから,これらの為にヘゴモドキ屬 Peranema DON や Diacalpe BL. に比較すべき親節をヲシダ亞屬Eudryopteris 中に作るのがよいと考えている.177. 台湾や琉球にあるコバザケシダ Dryopteris taiwanensis C. CHR. は南支那にもある.広東省大浦県銅鼓山でW. T. TSANG の採集した標本が即ちこれである.なおRWSENSTOCK が D. subhispidula ROSENST. と命名し,佐々木舜一氏がシャクコウシダと呼ぶFAURIE 採集の台湾の羊歯はこのコバザケシダである.178. チウレイハシゴシダ(下澤氏新称) Theoypteris Simozawae TAGAWA は下澤伊八郎氏が台北州文山郡中嶺で発見せられた新種である.オホハシゴシダThelypteris hirsutipes CHING に近縁のものであるが,葉はやや二形をなし〓堆を十分に付けた葉は〓堆が少ししかないか又は全くない葉より大きく,葉身は廣被針形で下部は少し狭くなり,羽片は狭くて浅く切込み,裏面には全く腺点がなく細脈は3乃至4対,〓堆は裂片の中肋に接近している.学名は発見者下澤氏に因むものである.

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© 1937 日本植物分類学会
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