抄録
大気中に存在する種々の農薬を低濃度まで正確に測定する方法として, 高分離能ガスクロマトグラフ/高分解能質量分析計 (HRGC/HRMS) の適用を検討した. 質量分析計の分解能を変えて標準溶液でのシグナル-ノイズ比 (SN比) を比較したところ, 高分解能 (R=5000) において28種類中21種類の農薬でSN比が向上し, 定量下限を下げることができた. また, 実際の試料ではクロマトグラム上で種々の妨害物質の影響を受けやすいが, 分解能を向上させることによって, ほとんどの農薬に対しこれらの妨害物質の影響を除くことができた. この方法を実際の大気環境の測定に応用した. 10m3の環境大気を活性炭チューブで捕集し, 抽出後フロリジルカラムによる分画を行い, 1mlまで濃縮した試料に対し, 10-3μg/m3オーダーまで大気中農薬の測定が可能であった.