分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
ニトロセルロース膜を抗体固定化担体とするテストステロンの電気化学的酵素免疫測定法
井上 久美フェラント パスカル平野 悠安川 智之珠玖 仁末永 智一
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2007 年 56 巻 6 号 p. 471-478

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抄録

ニトロセルロース膜を抗体の固定化担体として用いた酵素免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay)により膜に捕捉された標識酵素の活性を電気化学的に計測しテストステロンの定量検出を行った.膜に抗テストステロン抗体を固定化し,テストステロン及び西洋わさびペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase,HRP)標識テストステロンを競争的に反応させた.電子伝達メディエーターであるフェロセンメタノール及びHRPの基質である過酸化水素を添加すると,捕捉された標識HRPの酵素反応により酸化型フェロセンメタノール(FcOH)が生成される.金ディスク電極を用いて生成されるFcOHをアンペロメトリックに計測した.電極先端及び膜表面間の距離を常に一定に保持することが可能な電気化学測定用チャンバーを自作し,抗体を固定化したニトロセルロース膜及び金ディスク電極を設置した.ニトロセルロース膜の種類,抗体固定化の際に介在させるウシ血清アルブミン濃度,競合物質であるHRP標識テストステロン濃度及び電気化学計測における緩衝液の種類について検討し,条件の最適化を行った.得られた最適条件を用いてテストステロンを競合的に捕捉し,HRPの酵素活性を電気化学的に検出することによりテストステロンの定量を行った.テストステロン濃度の増加に伴い,還元電流応答の減少が観測され0.5~20 ng/mLの濃度範囲において相関が得られた.この手法を用いると,通常のウェルプレートを用いた発色法と比較して1けた高い感度が得られた.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2007
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