分析化学
Print ISSN : 0525-1931
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共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いる酵母菌体へ吸着した水溶性ポルフィリン誘導体の吸光光度定量
松本 朋子中原 卓郎松本 仁白上 努保田 昌秀
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2009 年 58 巻 5 号 p. 357-361

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抄録

機能性色素の定量法を開発するために,水溶性のメトキソ(アルキルオキソ)テトラフェニルポルフィリナトアンチモン臭化物錯体(1a~c)をモデル発色団に,酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)をモデル細胞として用いて吸着実験を行った.酵母菌に吸着した1の濃度について共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)を用いた顕微吸光光度分析によって定量を行い,吸着量を測定した.菌体水溶液を試験管に採取し,1水溶液を試験管に加え,菌体のブラウン運動を止めるために,寒天を加えた.調製した1(10 μmol dm−3),酵母菌(1.0×104 cells cm−3),及び寒天(0.4 wt%)を含む水溶液を,スライドガラス上に置かれた1辺1 cmの正方形に切り抜かれた厚さ50 μmのロの字型シリコーン製スペーサーに適当量を採取し,カバーガラスで覆いCLSMのステージに固定した.次に60倍の対物レンズを用いて設定した直径1.42 μmの測定領域を約5 μmの菌体の中心線上に合わせ,1の極大波長の554 nmでの吸光度及び菌体粒径を測定して,Lambert-Beer則による吸光光度分析によって菌体内濃度を決定した.その結果,吸着量は1a,1b,及び1cに対して,それぞれ54.2±7.3,49.8±6.2及び22.5±15.5 mmol dm−3と求められた.これらのことからCLSMを用いる吸光光度分析は,水溶性ポルフィリンの定量評価方法として活用できることが確認された.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2009
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