分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
ポリプロピレンの熱酸化劣化に及ぼす金属材料の影響及び劣化度に対応した評価手法の検討
真鍋 礼男南 博昭石川 正尚大塚 正人中村 篤
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2011 年 60 巻 3 号 p. 283-291

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抄録

ポリプロピレン(PP)の熱酸化劣化に及ぼす銅系金属の影響及び劣化度に対応した分析手法の検討を行った.熱安定性の異なるPPで成形したコネクターに端子を挿入することで接触性を保ち,140℃で120時間熱エージングを行った.端子は黄銅1種あるいは高銅合金をそのまま使用した場合と,それを基材としてスズめっきした計4種類を用いた.PPの熱酸化劣化はその熱安定性の優劣と端子構成材に依存しており,基材に高銅合金よりも黄銅1種を用い,更に厚み1~2 μmのスズめっきをすることで改善されるが,特に熱安定性の劣るPPには有効であった.これをSEMによるスズめっき中のスズ銅合金層の観察及びICPによるPP中の銅の定量より確認することができた.酸化劣化の分析法は汎用的な高温GPC,FT-IRによる顕微ATR,DSCによるOOT(Oxidation Onset Temperature),ヨードメトリー滴定法による過酸化物量を用いた.OOTと劣化度の関係をマスターカーブで整理することにより,初期品から劣化の進行した様々な段階の劣化度の評価に活用ができるようになった.更に,OOTと分子量の変化との相関関係も得られた.ヨードメトリー法が急激な分子量の低下の予測に高感度で検出できることが確認された.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2011
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