分析化学
Print ISSN : 0525-1931
年間特集「火」:報文
反応熱分解ガスクロマトグラフィーによる伝統材料「油団」中の油脂成分の化学構造解析
石田 康行尾川 貴子亀谷 将之加藤 隆明武田 邦彦大谷 肇
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2012 年 61 巻 10 号 p. 819-825

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抄録
主に和紙とえごま油から構成され,夏季用の敷物として使用されてきた日本の伝統材料「油団」中の油脂成分の化学構造解析を,有機アルカリ共存下での反応熱分解ガスクロマトグラフィー(反応Py-GC)により行った.まず,実際に職人により作製されて5年及び45年経過した新旧の油団試料を,有機アルカリの一種である水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)共存下で400℃ において反応Py-GC測定した.いずれのクロマトグラム上にも,油脂の酸化物に由来して生じることが知られている,スベリン酸やアゼライン酸などのジカルボン酸のジメチルエステルが油団に特徴的なピークとして観測された.特に,古い油団試料では,もとのえごま油に由来する脂肪酸成分がほぼ完全に消失したことから,古い油団ではえごま油の酸化がより一層進行し,難分解性の3次元ネットワーク構造が形成していることが示唆された.さらに,100℃ で5時間加熱して油脂成分を硬化させた,えごま油及び油団モデル試料の反応Py-GC測定を通じて,上記のジカルボン酸類が,えごま油の酸化反応を経て形成された3次元ネットワーク構造から主に切り出されていることが実証された.以上の結果から,油団表面上でえごま油の硬化反応が徐々に進行しており,このことが,使用して20~30年経過して強度や撥水性などの諸物性が最適になるという油団のユニークな性質と密接に関係していることが示唆された.
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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2012
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