2012 年 61 巻 2 号 p. 77-86
8種類の食材を対象に,加熱調理した際に発生するオイルミストを採取して,これに含まれる多環芳香族炭化水素(PAHs)及び脂肪酸をガスクロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS)を用いて分析した.その結果,食材1 gの加熱調理によりPAHsは0.06~976 ng g−1,脂肪酸は0.000250~7.51 mg g−1発生した.また,サンマの焼き調理の結果,PAHsの生成は,食材に炎が直接触れることで100倍以上に増加することが分かった.加えて,PAHsの生成量は,元の食材中の脂質含有量と正の相関が認められた一方,タンパク質や炭水化物含有量とは相関が認められなかった.このことから,PAHsは主として脂質の不完全燃焼により生成すると考えられた.PAHsの発生量が多かったサンマ及び牛肉について,調理排気の吸入による発がんリスクを評価した.その結果,サンマ(網焼き),サンマ(直火),牛肉(網焼き)調理時のPAHs吸入による発がんリスクは,それぞれ1.1×10−7,4.3×10−5,2.0×10−7と算出された.