2013 年 62 巻 12 号 p. 1071-1078
2011年10月から2012年8月まで約2か月ごとに北海道噴火湾(内浦湾)で海洋観測を行った.海岸と沿岸,海盆域で海水を採取し揮発性有機ハロゲン化合物(ハロカーボン)の濃度をガスクロマトグラフ質量分析計にて測定した.海洋が主要起源と考えられているブロモホルムの濃度分布を捉え,同一水塊での濃度変化から起源推定を行った.植物プランクトンの大増殖が起こる3月から4月にかけて噴火湾海盆域では,ブロモホルムの濃度が約1.3倍になった(上昇率5 pmol L-1 month-1).この上昇は植物プランクトンによるブロモホルム生産によるものと考えられた.海岸付近の大型藻類の成長が活発になる4月から8月は,海岸付近でブロモホルム濃度が急上昇してから高濃度域が湾全体に広がり,海盆域平均で濃度が約1.7倍になった(上昇率4 pmol L-1 month-1).この上昇は大型藻類によるブロモホルム生産によるものと考えられた.噴火湾のブロモホルム濃度の変化は植物プランクトンと大型藻類の両方の影響を受けることが分かった.