分析化学
Print ISSN : 0525-1931
環境中に放出された放射性物質の実態:報文
134Cs/137Cs放射能比を指標とした福島第一原子力発電所事故に由来する放射性核種の放出原子炉別汚染評価
小森 昌史小豆川 勝見野川 憲夫松尾 基之
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 62 巻 6 号 p. 475-483

詳細
抄録

福島第一原子力発電所事故によって環境中に降り積もった放射性核種が,地点ごとに原子炉1~3号機の中でどの放出源の寄与によるものであるかを134Cs/137Cs放射能比(以下放射能比)を指標として調べた.事故によって放出された134Csと137Csの放射能比はおよそ1 : 1であるが,細かく見ると原子炉ごとに比が異なるために環境試料中で放射能比のばらつきが生じており,その比が汚染源ごとの寄与の大きさを表す指標になると考えられる.そこで本研究では東日本の広域で土壌・植物片を採取してγ線測定を行い,各地点における放射能比を算出した.また東京電力が公開している原子炉建屋やタービン建屋の汚染水の放射能から,各原子炉における134Cs/137Cs放出放射能比を算出し,環境試料中の放射能比と比較した.その結果,最初に放射性核種を放出した1号機の放射能比と,最初に汚染が起こったとされる宮城県牡鹿半島の試料における放射能比がともに0.91程度と他原子炉・他地点と比較して低い値であることがわかり,同地点の汚染は1号機由来が強いことが実試料からも示唆された.また他地点でも放射能比を算出し,原子炉各号機由来の汚染の程度を見積もった.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry 2013
前の記事 次の記事
feedback
Top