分析化学
Print ISSN : 0525-1931
分析値の信頼性の確保と新たな分析法の提案:報文
廃棄物関連試料の放射性セシウム分析に係る試験所間比較: 土壌,飛灰,主灰及び溶融スラグを対象として
鈴木 剛滝上 英孝竹内 幸生山本 貴士田野崎 隆雄貴田 晶子酒井 伸一大迫 政浩
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2013 年 62 巻 6 号 p. 485-497

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抄録

東北地方太平洋沖地震に起因した福島第一原子力発電所における事故は,放射性物質の拡散をもたらし,放射性物質で汚染された廃棄物(放射性物質汚染廃棄物)の処理という困難な問題を生じている.喫緊の課題である放射性物質汚染廃棄物等の適正処理の確保には,放射性物質,特に放射性セシウム(134Cs, 137Cs)の精度の高い測定分析が必要である.本研究では,分析操作で留意すべき事項や精度改善の必要性等を確認するために,大量に発生している放射性物質で汚染された土壌と焼却灰に含まれる放射性セシウム分析について,国内の6試験所による試験所間比較を実施した.試験所間比較では,放射能濃度段階別に調製した土壌試料3種(道路脇,植え込み及び畑地から採取した土壌)及び焼却灰関連試料3種(飛灰,主灰,溶融スラグ)の放射性セシウムを,Ge半導体検出器,NaIあるいはLaBr3シンチレーション検出器で測定した.測定試料の放射能濃度レベルは,350~64000 Bq kg−1134Cs+137Cs)程度であり,放射性物質汚染対処特措法に基づく指定基準(8000 Bq kg−1134Cs+137Cs〕)はこの範囲にはいる.試験所間比較に参加した試験所で得られた試験所内及び試験所間の測定データは,いずれの相対標準偏差も10% 以下と小さく,再現性良く取得されていることが示された.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2013
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