2015 年 64 巻 5 号 p. 363-369
犯罪にかかわる植物油のガスクロマトグラフ分析のための簡便で迅速な手法として,固相マイクロ抽出(SPME)のファイバー部分をステンレス鋼製のマイクロコイルに置き換えたマイクロコイルサンプリング装置(MCSD)を開発した.この手法では,まず,マイクロコイルの先端を微量の油に浸し,毛細管現象によってマイクロコイル内に採取した後,これをガスクロマトグラフへ直接導入し,注入口の温度で熱脱離した油脂中のステロールなどの不けん化物を測定する.次に,マイクロコイル上に残った油脂に水酸化トリメチルフェニルアンモニウム溶液を添加し,これをガスクロマトグラフへ直接導入する.注入口で起こる熱化学分解反応により油脂を構成している脂肪酸をメチルエステル化体に変換し,これを測定する.マイクロコイルを使用するMCSDは,微量な植物油の法科学的識別に有用である.