分析化学
Print ISSN : 0525-1931
技術論文
イオンクロマトグラフィーによる海水中の無機陰イオンの定量─逆相系C18シリカカラムにおける残存シラノール基の効果─
山根 謙吾保元 貴圭堀岡 祐太竹田 一彦伊藤 一明
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2018 年 67 巻 1 号 p. 51-59

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抄録

イオンクロマトグラフィー(IC)による,海水中に存在する6種無機陰イオン[ヨウ素酸イオン(IO3),臭素酸イオン(BrO3),臭化物イオン(Br),亜硝酸イオン(NO2),硝酸イオン(NO3),ヨウ化物イオン(I)]の一斉定量を検討した.分離カラムとして残存シラノール基を持つ逆相系C18シリカカラムを用いた.溶離液に0.3 M塩化ナトリウム+0.5 mM塩化ドデシルアンモニウム(DAC)+5 mMリン酸緩衝液(pH 4.5)(流量1 mL min−1),検出器にUV検出器(225 nm)を用いたところ,19分以内で目的イオンの測定が可能であった.残存シラノール基を持つ逆相系C18シリカカラム(エンドキャップ未処理カラム)はエンドキャップ処理カラムと比べてBrとNO2間の分離が良好であった.繰り返し精度は保持時間,ピーク面積,ピーク高さの相対標準偏差(RSD(%))が1.55% 以内(n=5)であり,24時間の連続測定では2.97% 以内(n=48)であった.検量線は良好な直線性(r2>0.999)を示した.検出限界値(S/N=3)は,IO3(8.3 μg L−1),BrO3(24 μg L−1),Br(92 μg L−1),NO2(0.8 μg L−1),NO3(3.2 μg L−1),I(1.0 μg L−1)であった.瀬戸内海水の標準添加による回収率は93~108% であった.本法を瀬戸内海(広島湾)5地点で夏季の海水中陰イオン濃度の深度依存性に適用した.溶離液の流量1.5 mL min−1では対象イオンの分離・検出に問題はなく1サンプルの測定時間は13分であった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry 2018
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